御器谷法律事務所

担保・執行法改正
−担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律−
 (平成16年4月1日施行)

担保物権に関する民法の改正
◇抵当権
(1)担保不動産収益執行 (2)抵当権消滅制度
(3) 一括競売 (4)短期賃貸借制度 (5)根抵当権の確定
◇質権
◇先取特権

執行法の改正                
◇金銭執行、担保権の実行に関する改正
 1 不動産競売
(1) 執行法上の保全処分等 : 1)発令要件の緩和 2)公示保全=当事者恒定 3)特定要件の緩和
(2) 内覧制度
 2 動産競売
 3 金銭執行の実効性確保手段 :
(1)財産開示手続 (2)履行確保手段の拡充
 4 差押禁止の範囲

◇非金銭執行(明渡執行等)に関する改正
 1 占有移転禁止仮処分命令
 2 強制執行 : (1) 承継執行 (2) 明渡催告 (3) 目的外動産の売却
 3 間接強制

担保物権に関する民法の改正
◇抵当権
 (1) 担保不動産収益執行(民法§371、民事執行法§180U)
不動産を目的とする担保権の実行の手段として、改正法は、従前からある 1)不動産競売手続に加えて、2)担保不動産収益執行手続(不動産から生ずる収益を被担保債権の弁済に充てる方法、強制競売における強制管理類似の手続)を創設し、両者を独立して申し立てることを可能にしました。
この制度の創設に伴い、民法は、抵当権の被担保債権につき不履行があった場合に、抵当権の効力が果実(天然果実及び法定果実)に及ぶ旨条文を改定しました。
なお、抵当権者は、従前、実務上認められていた賃料に対する物上代位の方法により債権の回収を図ることも可能であり、管理人を選任することが適当な事案であるか等を考慮し、いずれかの手続を選択することになります。
但し、強制管理等の開始決定の効力が生じたときは、既に行われている差押え、仮差押の効力は停止されることになりました(民執§93の4)。
 (2) 抵当権消滅制度(民§378以降)
従前の「滌除(てきじょ)」手続の内容を改正し、また、名称も「抵当権消滅制度」に変更されました。
  1. 抵当権者が抵当権を実行しようとするときに予め第三取得者に対して抵当権実行手続を通知しなければならない、との規定を削除しました。
  2. 抵当権消滅制度を利用できる者を「抵当不動産の所有権を取得した第三者」に限定しました(地上権者、永小作権者を除外、民§378)。
  3. 抵当権者の上記通知義務の廃止に伴い、第三取得者は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前であれば、抵当権消滅請求をすることができるようになりました(民§382)
  4. 抵当権者が第三取得者から抵当権消滅の申出を受けた後に競売の申立てをすることができる期間を1か月以内から2か月以内に伸長しました。また、抵当権者が抵当権消滅の申出を拒絶する場合、従前は増加競売の申立てをする義務があったところ、この増加買受義務は廃止されました。
  5. 競売の申立てをした抵当権者が申立てを取下げる場合、登記をした他の債権者の承諾を得ることが不要となりました。
  6. 登記をした全抵当権者が第三取得者の提供した代価又は金員を承諾し、且つ第三取得者がその代価もしくは全額を払い渡し又は供託したときは、抵当権が消滅します(民§386)。
 (3) 一括競売(民§389)
改正法は、民法389条の範囲を拡大し、抵当権設定後に 1)抵当権設定者のみならず、2)それ以外の第三者が抵当地に建物を築造したときでも、土地の抵当権者が建物を抵当地と共に競売することができるようになりました。
但し、建物所有者による抵当地の占有について、抵当権者に対抗できる権利を有する場合には、この限りではありません。
 (4) 短期賃貸借制度(民§395)
改正前は、抵当権設定登記後の短期賃貸借(民§602参照)が抵当権者に対抗できる旨の規定がありました。この規定が執行妨害手段として濫用されているとの指摘があったところから、改正法は、抵当権者に対抗することができない賃貸借についてはその期間を問わず、原則として、抵当権者及び競売における買受人に対抗することができなくなりました。
また、抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物を競売手続の開始前から使用・収益をするもの等は、買受人の買い受けの時から6か月を経過するまでは、建物を買受人に引き渡す必要がないと規定され、明渡しの猶予期間が定められました。
 (5) 抵当権の確定(民§398ノ19U)
改正法により、根抵当権者が担保すべき元本の確定を請求することができることになり、また、元本確定の登記を単独で申請することができるようになりました(不動産登記法§119条ノ9)
また、元本確定事由のうち「取引の終了」が削除されました。

◇質権(民§363)
従前は、指名債権に対する質権設定についても証書の交付が効力発生要件であったところ、改正法は、「譲渡に証券の交付を要する債権」につき質権の目的とする場合に限って、証書の交付が効力発生要件であると定めました。
従って、その反対解釈として、指名債権に対する質権設定については証書の交付が効力発生要件ではなくなりました。このような改正により、指名債権については、質権設定契約が重複する可能性があるため、これに対する対策が必要と考えられます。
◇先取特権(民§308)
従前、雇人給料の先取特権については、「最後の6か月」の「給料」に限定されていたところ、先取特権の種類と範囲を拡大し、商法295条と同様、「給料等雇用関係に基づき生じた債権」につき、先取特権が認められることとなりました。



執行法の改正
◇金銭執行、担保権の実行に関する改正
1 不動産競売 
 (1) 執行法上の保全処分等
《参照条文》民事執行法
 §55: 売却のための保全処分等
 §68の2: 買受けの申出をした差押債権者のための保全処分等
 §77: 最高価買受申出人又は買受人のための保全処分等
 §178: 担保不動産競売の開始決定前の保全処分等
1) 発令要件の緩和(民執§55、§77、§187)
従前、売却のための保全処分等、最高価買受申出人又は買受人のための保全処分等、不動産競売の開始決定前の保全処分等につき、債務者又は不動産の占有の者価格減少行為が著しい場合に限って保全処分を認めていたところ、「著しく」という要件が削除されました。
また、執行官保管のための要件として、これらの者につき「特別な事情」が認められる場合に限定されていたところ、この要件も不要とされました。
2) 公示保全処分(民執§55、§68の2、§77)
執行裁判所が執行法上の保全処分を発する場合において、必要があると認めるときは、その旨を執行官に公示させることができるようになりました。
また、この保全処分の執行後に当該不動産を占有した者は、その執行がされたことを知って占有したものと推定されることになりました(§83の2U)。
3) 特定要件の緩和(民執§55の2、§68の2、§77)
上記の保全処分又は公示保全処分を命ずる決定については、当該決定の執行前に相手方を特定することを困難とする特別の事情があるときは、執行裁判所は相手方を特定しないで発することができるようになりました(執行時における不動産の占有者として特定)。

 (2) 内覧制度(民執§64の2)
執行裁判所は、差押え債権者の申立てがあるときは、執行官に対して、内覧の実施を命じなければならない、との規定が新設されました。

2 動産競売(民執§196)
 改正法により、債権者は、執行裁判所に対し、1)当該動産を提出した場合等に加えて、2)担保権の存在を証する文書(証明文書 ex.契約書、請求書、受領書)を提出して、動産競売の開始の許可の申立てをすることができるようになりました。これにより、動産売買の先取特権のように、占有を伴わず、かつ占有者から差押えの承諾を得るのが困難な場合の競売申立が、従前より容易になりました。但し、目的動産が債務者の住居等(民執123条)にある場合に限られます。   

3 金銭執行の実効性確保手段
(1) 財産開示手続(民執§196以下)
金銭債権についての債務名義を有する者、一般の先取特権を有する債権者につき、強制執行等による満足が得られないような場合に、債務者の財産開示の申立てをすることができるようになりました。
この場合、債務者は、財産開示の期日に出頭し、宣誓をした上で、自己の財産につき陳述しなければなりません。
(2) 履行確保手段の拡充
  1. 扶養等の義務に係る定期金債権(婚姻費用、養育費等)に係る定期金債権についての強制執行においては、弁済期の到来した定期金についての差押えと同時に、弁済期の到来していない定期金についての差押えをすることができることになりました。この場合、弁済期の到来していない定期金に関する差押えの対象は、給与等継続的給付に係る債権であって、その弁済期が当該定期金の弁済期より後に到来するものに限られます(民執§151の2)。
  2. 扶養の義務に係る金銭債権についての強制執行においては、民事執行法152条の規定により差押えが禁止されている債権であっても、当該債権の支払期に受けるべき給付の2分の1に相当する部分については、同法153条による範囲変更の決定を要しないで、差押えをすることができることになりました(民執§152V)。

4 差押禁止の範囲
 差押えが禁止される金銭の範囲について、従前は、「標準的な世帯の1月間の(…)政令で定める額の金銭」と定められていたものが「2月間」に拡大されることになりました(民執§131(3))。
 また、同号及び152条1項(差押禁止債権)における「政令で定める額」の引き上げが行われることになりました。

◇非金銭執行(明渡執行等)に関する改正
1 占有移転禁止仮処分命令(民事保全法§25の2、§54の2)
 不動産に対する占有移転禁止仮処分の申立ての際、債務者を特定することを困難とする特別の事情があるときは、裁判所は、債務者を特定しないで、その執行の時に不動産を占有する者を債務者として、不動産の占有移転禁止の仮処分命令を発することができるようになりました。

2 強制執行
(1) 承継執行(民執§27V)
執行法上の保全処分(民保§25の2、民執§55、77、187)の執行がされ、当該不動産占有者に対して引渡しの強制執行ができるような場合において、債務者を特定することが困難である特別の事情があるときは、債務者を特定しないで執行文を付与できるようになりました。
(2) 明渡催告(民執§168の2)
執行官は、執行開始日に、当該不動産等を占有する債務者に対し、原則として1月後の引渡し期限を定めて明渡しの催告をし、その期限及び債務者が占有を移転することを禁止されている旨を公示しなければならないとの規定が設けられました。
この明渡しの催告後に不動産等の占有の移転があったときは、執行官は当該占有者を債務者と見なして強制執行をすることができるようになりました。
(3) 目的外動産の売却(民執§168X)
執行官は、不動産等の明渡し執行において、目的外の動産について、債務者等に引き渡すことができないときは、これを売却することができるようになりました(執行費用の確定決定が不要となりました)。

3 間接強制(民執§173)
 物の引渡し債務についての強制執行につき、直接強制の方法だけでなく、間接強制の方法によって行うことができるようになりました。
 また、代替執行の方法によって強制執行を行うことができる場合にも、間接強制の方法によっても行うことができるようになりました。

 この担保・執行法改正につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

執務の方針| 弁護士のプロフィール| 取扱事件 | ご案内 顧問契約 |

弁護士費用 | 事務所案内図 | リンク| トップ